《火盗みと災厄の甕》プロメテウスの火盗み、パンドラの誕生
/ギリシャ神話
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プロメテウスの火盗み
1.
事の発端はこう語られている。神々と人間の取り分を決める時、プロメテウスが進み出て、大きな雄牛を切って二つに分け、ゼウスに神々の取り分を選ぶよう求めた。一方は、栄養のある肉と内臓を食べられない皮(雄牛の胃袋といわれる場合もある)で包んだもので、もう一方は骨の周りに脂身のみを巻きつけて美味しそうに見せたものであった。これには、栄養のある肉と内臓を人間に与えるために、ゼウスに脂身で包まれた骨を選ばせてやろうという、プロメテウスの思惑があった。
ゼウスは不死の神々にふさわしいものとして腐らない骨を選んだ。そして、プロメテウスへの仕返しとして、疲れ知らずの火の精をトネリコの木に与えることをやめ、肉や内臓を調理するための火を人間から取り上げた。(文明が発達する前は、火の精が木の中にいるから、暴風や落雷による山火事が起きたり、人の手で木や竹から火を起こすことができたりすると考えられていた。)
なお、プロメテウスの思惑通りに騙されたゼウスが、怒って人間から火を取り上げたとする説もある。
『このとき以来、獣を犠牲にほふった場合には、人間が肉と内臓を食べ、皮も利用し、天上の神々には骨と脂肪を焼いた匂いを捧げる習慣が定まった(岩波ジュニア新書40ギリシア神話より抜粋)』といわれる。
事の発端はこう語られている。神々と人間の取り分を決める時、プロメテウスが進み出て、大きな雄牛を切って二つに分け、ゼウスに神々の取り分を選ぶよう求めた。一方は、栄養のある肉と内臓を食べられない皮(雄牛の胃袋といわれる場合もある)で包んだもので、もう一方は骨の周りに脂身のみを巻きつけて美味しそうに見せたものであった。これには、栄養のある肉と内臓を人間に与えるために、ゼウスに脂身で包まれた骨を選ばせてやろうという、プロメテウスの思惑があった。
ゼウスは不死の神々にふさわしいものとして腐らない骨を選んだ。そして、プロメテウスへの仕返しとして、疲れ知らずの火の精をトネリコの木に与えることをやめ、肉や内臓を調理するための火を人間から取り上げた。(文明が発達する前は、火の精が木の中にいるから、暴風や落雷による山火事が起きたり、人の手で木や竹から火を起こすことができたりすると考えられていた。)
なお、プロメテウスの思惑通りに騙されたゼウスが、怒って人間から火を取り上げたとする説もある。
『このとき以来、獣を犠牲にほふった場合には、人間が肉と内臓を食べ、皮も利用し、天上の神々には骨と脂肪を焼いた匂いを捧げる習慣が定まった(岩波ジュニア新書40ギリシア神話より抜粋)』といわれる。
2.
ゼウスから火を取り上げられたために寒さに震え、夜の暗闇の中で外敵の襲撃に怯える人間をプロメテウスは可哀想に思い、人間に火を与えたいと願った。しかしゼウスは、神の火を人に与えれば災いとなるとして、これを拒否した。
プロメテウスはやむなく天界から火を盗んだ。どこから火を盗んだかは諸説あり、炎と鍛冶の神ヘパイストスの作業場の炉の中からとも、神々の宮殿のかまどからとも、太陽神の戦車の燃える車輪からとも、ゼウスの雷火からともいわれている。いずれかの場所でオオウイキョウの茎に火をつけ、それを持って地上に降り、人間に火を渡した。
・オオウイキョウ
セリ科の植物。茎が直径3~7cmと太く、高さは2~3mにまで育ち、中の髄は灯心として利用できる。枯れて乾いた外皮は固く、軽くて丈夫なため、洋酒の神ディオニュソスが杖として使っていることでも知られている。
こうして、人間は火を使って暖を取り、料理を作り、外敵から身を守れるようになった。火は文明や技術を発達させる基盤となり、人間に多くの恩恵を与えたが、やがて、ゼウスが言った通り、その火を使って武器を作り戦争を行うという災いに至った。
プロメテウスが人間に火を与えたことを知ったゼウスは怒り、ついに権力の神クラトスと暴力の神ビアに命じてプロメテウスを捕らえさせた。そして、プロメテウスはカウカーソス(コーカサス)山の山頂に磔(はりつけ)にされ、毎日肝臓をエトン(テュポーンとエキドナの子である巨大な鷲)についばまれるという罰を受けることとなる。プロメテウスは不死であるため、彼の肝臓は夜中に再生し、翌日再びエトンに肝臓をついばまれるという日々を繰り返した。
以上がヘシオドスによって語られている神話の大筋である。この神話をアレンジしたものとしては、アイスキュロスの作品が知られているが、ここではその内容は割愛する。
のちにプロメテウスは解放されるが、どのように解放されたのかについては諸説あり、ヘラクレスに助けられたというものや、ゼウスの王位の危機を回避する予言を交換条件としたというものがある。また、解放されるまでの刑期についても諸説あり、3万年といわれることもある。
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パンドラの誕生
1.
ゼウスは、プロメテウスによって火を取り戻した人類に災いをもたらすために、神々に命じて人間の女を作らせた。
はじめに、ヘパイストスが、土と水を混ぜ合わせた泥に人間の声と力を吹き込み、また、女神のように美しく、乙女のように愛らしい外見となるように彼女の身体をを作った。
アテナは機織(はたおり)や女のすべき仕事の能力を与え、アフロディテは男を苦悩させる魅力を与え、ヘルメスは盗人の本性と犬のように恥知らずで狡猾な心を与えた。
さらに、カリテス(優美の女神たち)やホーライ(季節の女神たち)は数々の装飾品を与えた。
このことから、『オリュムポスのすべての(パンテス)神々からの人間への贈り物(ドーロン)ということで、パンドラと名づけられ(岩波ジュニア新書40ギリシア神話より抜粋)』たといわれる。
ゼウスがオリュンポスの神々に作らせた人間の女(パンドラ)は、外見は美しく飾り立てて、内面に卑しい心を持っている。そこには、食べられない骨を美味しそうな脂身で包んだものをゼウスに選ばせたプロメテウスに仕返しをする意図があるとも考えられる。
ゼウスは、プロメテウスによって火を取り戻した人類に災いをもたらすために、神々に命じて人間の女を作らせた。
はじめに、ヘパイストスが、土と水を混ぜ合わせた泥に人間の声と力を吹き込み、また、女神のように美しく、乙女のように愛らしい外見となるように彼女の身体をを作った。
アテナは機織(はたおり)や女のすべき仕事の能力を与え、アフロディテは男を苦悩させる魅力を与え、ヘルメスは盗人の本性と犬のように恥知らずで狡猾な心を与えた。
さらに、カリテス(優美の女神たち)やホーライ(季節の女神たち)は数々の装飾品を与えた。
このことから、『オリュムポスのすべての(パンテス)神々からの人間への贈り物(ドーロン)ということで、パンドラと名づけられ(岩波ジュニア新書40ギリシア神話より抜粋)』たといわれる。
ゼウスがオリュンポスの神々に作らせた人間の女(パンドラ)は、外見は美しく飾り立てて、内面に卑しい心を持っている。そこには、食べられない骨を美味しそうな脂身で包んだものをゼウスに選ばせたプロメテウスに仕返しをする意図があるとも考えられる。
2.
パンドラはヘルメスによってエピメテウス(プロメテウスの弟)の元に届けられ、彼の妻として迎え入れられた。
ある日、パンドラは好奇心に負けて、決して開けてはいけないと言われている甕(または壺、箱)を開けてしまい、様々な災い(ニュクスの子供たち、疫病、悲嘆、欠乏、犯罪などなど)を解き放ってしまう。パンドラは蓋を閉じ、甕(または壺、箱)の中には、最後に「希望(エルピス)」だけが残った。
燃え広がる炎のように、世界には災厄が満ち、昼も夜も人々を苦しめた。ゼウスはパンドラを使って、火を取り戻した人類に災いを与えることに成功した。プロメテウスが天界から火を盗み、人類に与えることがなかったら、パンドラが作られることも、人類に災厄がもたらされることもなかったであろう。
甕(または壺、箱)は、ゼウスから与えられたという説や、エピメテウスの家に元々あったという説がある。
「希望(エルピス)」の解釈は諸説あるが、ここでは割愛する。
また、後世に語られる別伝では、甕(または壺、箱)の中身はあらゆる幸福とされ、パンドラが蓋を開けたために希望(エルピス)以外の全てが逃げ去ってしまったというものがある。
この神話が由来となり、現代では、開けてはいけないものや、禍いをもたらすために触れてはいけないものを、「パンドラの箱」と呼ぶようになった。
エピメテウスとパンドラの夫婦自身は、箱から飛び出した災厄の数々を免れ、その後起きた大洪水も生き延びたという。
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